vivo daily stand 中野本店

東京都中野駅徒歩3分!vivo daily stand中野店はフレンチデリとデイリーワイン、エスプレッソやカフェラテを提供するバルです。

カテゴリ:ワイン > ブドウ

ほとんどの席が埋まり始める遅い時間、いつもの時間に男性も現れた。

入口付近のスタンディング席と、カウンターに一つ空きがある。常連客はスタンディング席に流れる傾向にあるが、今日は迷わずカウンターに向かった。

「こんばんは」

「おっす、生ちょうだい」

右手でレバーを引き、左手に持ったグラスに金色のビールが注がれ、白いクリーミーな泡で蓋をする。

「お待たせしました」

「はいよ」

ゴクゴクと一口で半分くらい飲み、一呼吸。ようやく忙しい一日が終わったみたいだ。

黒髪のナチュラルショート。健康的な小麦肌。一見すると無地のネイビースーツに見えるが、光の当たり具合で、光沢のあるストライプ柄が浮き出ている。

いつもと雰囲気が少しちがう。何か思い詰めて、寂しげな表情。

「なんか赤ちょうだい」

「どんな感じにしますか?」

「今日は任せるよ」

グラスは既に空になっている。

何を勧めようか

「今日さ、娘の誕生日なんだよね」

「…………」

何も言わずにセラーから一本のワインを取り出す。

そのボトルのラベルはキラキラしていて、テントウムシのイラストが描かれた可愛らしいデザイン。透き通った明るいルビー色のワイン。

「どうぞ」

「可愛いラベルだね」

ワインを口に含む

「飲みやすいね。美味しいよ、ありがとう」


事情は分からない

ただ女の子というイメージのワインを勧めずにはいられなかった。

男性はビールを飲んでいたときより、少し嬉しそうな表情で、じっと優しい目でボトルを眺めていた。


テントウムシは幸運を呼び込むということ・ワインは味だけでなく雰囲気で飲むこともできる


伝えようとしたが、

その必要はなさそうだ

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ブドウ シリーズ

ナイロールの眼鏡をかけた

知的な印象の男性は、

「これ美味しいね、すごく好み」

ザクロ色がかった深いルビー色をグラスの中でまわしながら、余韻に酔いしれている。

ナイロールとはレンズの上にだけフレームのあるタイプのこと。「これ、僕も好きです」と、グラスに注いだボトルをラベルが見えるようカウンターにそっと置く。

年季の入った天然の一枚板。広く、八メートルはあり、一般的なレストランとは異なり、カウンターがメインだ。

男性がお店に通い始め、一年以上だろうか。様々なタイプのワインをお任せで注文する。その中で一番好みだったワインが、

【ガッティナーラ トラヴァリーニ】

【ネッビオーロ】百パーセントでつくられるワイン。北イタリア、ピエモンテ州の一番左端のガッティナーラ地区。

ピエモンテで有名なワインとしてバローロとバルバレスコがあるが、これらも同じ【ネッビオーロ】からつくられる。

これまで提供してきたワインの統計では、女性的なニュアンスのワインが好きみたいだ。

バラの繊細な香りや、胡椒を思わせるスパイシーな香り、柔らかく、絹のようなタンニンとストラクチャー。酸がしっかりあるのに、ここまで心地よくエレガントに飲めるワインはそう多くない。

丁度一年前、十月に男性はこのワインが好きで、現地のワイナリーにまで行ってしまったのだ。後日、大量のワインを買い付けてきた。本当に気に入っているんだろう。

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「買ってきたワイン、今度一緒に飲もうよ」

一度、顔だけ出してくれた。

イタリアから帰国後、しばらく男性の来店はなく、久々に十一月の下旬に来店。深夜二十四時頃、カウンターで一人、赤のグラスワインと前菜を召し上がっていた。その日は、仕事が余程忙しいのか、心身共に憔悴しきっている。

「大丈夫ですか?」

「ちょっと忙しいけど、大丈夫だよ」

この人が仕事で愚痴や弱音を吐いたことは一度もない。

いつもお店に、シェフがつくる料理とお任せワインを楽しみに、嬉しそうに飲んで、食べていた。

「それじゃ、またね」

お店の入り口までお見送り

これが男性の最後の言葉となった。

突然ぱったりとお見えにならなくなり、連絡もつかず、仕事が忙しいんだろうなと、その程度に思っていた。

そして、2017年、1月5日

確か年明け営業初日だったと思う。

その日、

男性の突然の訃報を知ることになった。

数ヶ月後

「予約なしでも大丈夫ですか?」

三名様、御来店

テーブル席に案内すると

「実は…」

ご親族の方々だった

その日は男性がよく食べていたものと、お気に入りだったガッティナーラをボトルで注文。あの子はこういうものを食べて、飲んで、こんなことを感じていたんだ。終始、 団欒していたが、泣いているようにしか見えなかった。

ウェイターからは男性の人柄や、食事やワインの好みを説明、それ以外の言葉は何一つ出てこない。

何も言えず、無力感しかなかった。





常連のお客様が次の日また来てくれるとは限りません。【飲食店とお客様】この関係を対等に良く保てるよう、誠意を持って一日望んでいます。

予想もしないことが起きる連続で、一日振り返ると後悔することが多く、

あの時、こうしていればよかった。

あの時、こういう言い方だったら。

ショッキングな出来事も頻繁にあります。毎日その繰り返しです。たぶんこれからもずっとそうです。

それと同じように、扱ってきたワインにも一本ずつそれぞれの思い出と、記憶が積み重なっていきます。

ここまで書いてきて何を言いたいのか、自分でも未だ解決できていません。お店に来てくれた人にソムリエとして何ができるのか、できたのか。所詮、人一人にそれほど多くのことはできないと思っています。

なんらかの理由で足が遠のいても、その人のことを考え続けられるのか。この話の出来事がきっかけで、自分が信じてきた【接客】が崩れ落ちました。

当時は不謹慎だと思い、何も記録することはせず、記憶として留めていましが、それでも人は気付くと時間が経つにつれ簡単に物事を忘れていきます。

思い出すきっかけがあり、記憶を辿りそのまま勢いで殴り書きました。


初心を忘れず、

これからもっと精進します。

山の澄んだ空気、パノラマに広がる緑色の景色、畑の土、芝生が入り交じった香り。周辺には山羊やニワトリに、子供達が餌をあげている最中だ。


今日は都心の生活では味わうことの出来ない体験を楽しみにやってきた。東京から車で約六十分、神奈川県伊勢原市、日曜日、時刻は十三時、風速二メートル、晴天。一週間ほど前に、友達から誘いがあった。【野外レストラン】夏が終わり、十月上旬の涼やかな季節に、これほど魅力的なイベントはないだろう。断る理由などない。


「お飲み物はこちらからお願いしまーす」ぞろぞろとドリンクコーナーに人が集まり、各々が順番に注文している。


「ソーヴィニョンブラン!!」


前方から男の声が聞こえてきた。


「お」思わず声に出る。


豊富に白ワインの種類があるみたいだが、迷わずソーヴィニョンブランをお願いする。山と畑、動物に囲まれ、簡易テーブルに豪華なアンティパストが並ぶ。そしてワイングラスを片手に芝生を踏みしめているのは変な感じだ。


スッと香りを嗅ぐ、強烈な青草やハーブ、他のブドウとは明らかに異なる強い香り。一度体験すれば二度と忘れることはない。この明るい緑色のワインは、芳香性が高いことが特徴だ。同じ個性的な香りを持つ、フレッシュなシェーヴルチーズなら、爽やかな酸味も同調し、相性が良いはずだ。目の前の山羊を眺めながら。少し後ろめたい。


今見える風景をそのままワインにしたようなもの。言い過ぎではないだろう。自然に囲まれて飲むソーヴィニョン・ブランは格別に美味しいと確信する。真夏にテラスで飲む雰囲気も捨てがたい。この場でこんなことを考えるのは自分くらいか。


まだ、飲まずにイメージを膨らませている。気付けば、周りは賑やかに飲み始めていた。グラスに口をつけようとした瞬間、いつの間にか、「ソーヴィニョン・ブラン!」と叫んでいた男が隣に居る。


「何飲んでんの?」


「白ワイン」


初対面で馴れ馴れしい人は苦手だ。


「ブドウは?」


「ソーヴィニョン・ブランです」


「お、一緒じゃん」


ナンパだろうか。


面倒だ、ゆっくり飲みたい。


男は山羊を指差しながら


「山羊には悪いけど、この酸味と香り、シェーブルか魚介に合わせたいね。もしくはあの畑の採れたて野菜でも」


「お」

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ソーヴィニヨン・ブランの語源はフランス語の「ソヴァージュ(野生的な)」から来たと言われ、早熟で樹勢の強いブドウです。


青々しい風味は、未熟時と、完熟時で大きく味わいが異なるのが特徴的で、未熟時は草っぽい青臭さを特に強く感じますが、熟すとトロピカルな風味に変わります。


前者はフランス、ボルドーに多く、後者はニュージーランド、南島マルボーロ。ニュージランドのソーヴィニョンはトロピカルな夏のイメージ。これから寒い季節は、上品なボルドー・ブランをお勧めします。


金曜の夜、ソーヴィニョン・ブランで今年の夏の思い出を、おつまみにいかがでしょうか。


vivo daily stand全店


今月からシェーブルはじめました。






ブドウシリーズ

【シャルドネ】

【オレンジワイン】

何処にでもあるお洒落な居酒屋だっただろうか、思い出せない。いつもはビールやハイボールだが、今日はなんとなくワインにチャレンジしようと思った。

メニューには白ワインと赤ワインが1種類ずつ。白ワインの方が飲みやすそうだ、白を注文。【シャルドネ】葡萄の品種らしい、よくわからない。最近よく見るカタカナ。

目の前にグラスが置かれ、勢いよくジャバジャバと注がれる。この液体量で同じ価格なら、おそらくジョッキのビールの方が満足度が高いだろう。

グラスを手に取り、何も考えずにゴクンと喉を鳴らす。グラスに鼻を近づけて匂いを嗅ぐ仕草は、格好つけているようで嫌いだ。メニューの解説にはミネラルやレモン、フレッシュな……この舌には何ひとつヒットしない。

正直、ワインを美味しいと感じたことは一度もないのだ。すぐに飲み干し、すみませんと店員さんを呼んでハイボールを注文した。



肌は白く、短髪で整った顔立ちの青年が「失礼します」一言。ボトルの生産地と名前が読み上げられ、抜栓。流れるような作業が美しい。人は見ていないようでウェイターの動作をなんとなく見ているものだ。そして、若々しい輝きのあるレモンイエローの液体が、真っ白なテーブルクロス上のグラスに注がれる。

何処かお洒落な居酒屋で、ぼんやりワインは美味しくないと思っていたあの頃を、ふと思い出しながら、香りを嗅ぐ。柑橘系、レモンやグリーン系のハーブを瞬時に感じ取れる。 口に含み、ゆっくり味わう。

強い酸味があり爽やかな印象、フレッシュでミネラル感もしっかりしている典型的な【シャブリ】だ。例えるならまだまだ荒削りで素っ気ない若者。専門的になり過ぎないよう気を遣いながら彼に説明する。

10年前、自分もこんな風だったのだろうか。【シャルドネ】すら分からず、ワインに苦手意識があった。

今では、自然にシャブリと言えて、人に説明できることが少し可笑しくて、1人で笑ってしまった。彼は不思議そうな顔でこちらを見ながらひとくちゴクンと飲んだが、お酢を飲んだような表情になり、今度は2人で笑ってしまった。
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シャルドネは個性がないことが個性というか、汎用性が高いです。産地や醸造方でガラリと表情が変わります。つまり、産地やワイナリーの特徴や個性をはっきりと感じることが多いです。

今では何処にでもあるシャルドネ種の白ワイン。たまにワインの選び方がよくわからないという相談をされますが、シャルドネの場合は、産地を基準にして選んでみるのもいいと思います。

因みに、シャルドネの名は、フランス・ブルゴーニュのマコネにある村、【シャルドネ村】から取ったものと言われているのはご存知でしたか?

今宵はシャルドネで世界各国旅行気分を味わってはいかがでしょうか。

目の前にグラスが置かれる。一瞬目を見開く。少しびっくりしたが、それは気付かれないようにする。

今まで見てきたものとは別の異質な色。白色でもなく、赤色でもない。透明感のある橙色。

ヴィネガーと硫黄、枯葉の香り。口に含むと外見や香りとは裏腹に果実味があり、思いのほかあっさり飲みやすい。

これはなんだろう…どうやったらこのような綺麗な色になるのだろうか。

そう考えていると20代前半だろうか、若いウェイターが気取らず一言、「最近流行りのオレンジワインです」


ソムリエ試験2次試験、お疲れ様でした。本日合格発表でしたね。論述に「オレンジワインについて」が出題されたみたいです。


簡単な説明として


"オレンジワインとは、赤ワインのような白ワイン。 白ブドウを原料に、赤ワインの製法を用いて造られたワインが”オレンジワイン”です。 白ブドウの皮や種も一緒に仕込むことで、皮由来の香りや、通常白ワインにない渋味を伴う複雑な味わいのワインになります"


ここ数年、ワイン業界では少し流行っていました。現在は多く見られるようになり、お店側としてはワインを提案する際、個性的な外観と味わいなので、貴重なアイテムの1つとして扱っています。

経験上、初めから最後まで通して飲むこともでき、白ワインが飲みたいけど少し軽い、けれど赤って感じでもない。

そんな時には、ロゼワインやオレンジワインをお勧めしています。どちらも初めは少しひんやり冷やしていますが、徐々に温度が上がっていくにつれ、白ワインよりも様々な表情が感じ取れます。

今の季節にはちょうどいいかもしれないですね。今日からオレンジワイン知ったかぶりしちゃいましょう。

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