昨夜、ウルトラの母に会いました。

母は言います。

「うちのカウンター座って飲み食いしたらお客さんだ、しなきゃ客じゃない」

「今までヤクザ相手にしてきたから、チンピラごとき追い返す」

「ちょっと、息子と娘のフリしてくれない?」

「今帰ってきたってことにして」

「もう少し、行儀良く食べてくんない?」

「今年で創業五十年目、周年なんてやらない、今までやったことない」

時折、僕の腕にチョンチョンとソフトタッチしながら遠い目で語る母。

「疲れ切ったお客さんが一日の最後に来てくれた」

「子育て中でブランクあったけど、25年後にまた来てくれた」

「この子が五歳の時にできたんだよ、この店」

時折、息子の大将が「そこで石油王になってんじゃないよ、戻ってきなさい」

母におそらく聞く耳なんてない、続けて語りまくる。

もはや僕らは無言、相槌もない。それでも進んでいく母物語。

そんな話を聞きながら食べる秋刀魚は美味しくて、飲食店のあるべき姿を聞けた気がするよお母さん。

またね

image